98年9月18日科技庁長官からの回答書とその有効性


 (→この回答書の法的有効性)

980918回答書

番        号 
平成10年9月18日 

岐阜県知事
 梶 原  拓 殿

科学技術庁長官     
竹 山  裕    

  動力炉・核燃料開発事業団東濃地科学センターが推進する地層科学研究
  について(回答)

 時下益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
 日頃より、科学技術の振興に深い御理解と御協力を賜り、誠にありがとうござい
ます。
 今般、平成10年9月14日付け企調第421号をもって貴職から照会のあった
事項については、貴職及び瑞浪、土岐両市長が処分地に係る立場を明確にされてい
ることを踏まえ、次のとおり回答します。

1. 動力炉・核燃料開発事業団(本年10月1日に核燃料サイクル開発機構に改組)
東濃地科学センターが推進する超深地層研究、空中物理探査、地上物理探査、ボ
ーリング調査をはじめとする地層科学研究は、地質環境の特性に関する研究とそ
のための調査技術の開発及び地質環境の長期安定性に関する研究を中心として行
われており、高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発の基盤となるとともに、
わが国の地下深部についての学術的研究に広く寄与するものであります。貴職が
御理解されているとおり、
この研究では、研究実施区域に放射性廃棄物が持ち込
まれることはないし、当該区域を高レベル放射性廃棄物の処分地とするための研
究が行われるものではありません。

2. 高レベル放射性廃棄物の処分地の選定については、2000年を目途に設立される
実施主体が行うこととなっていますが、
実施主体による処分予定地の選定に当た
っては、地元の了承を得ておくもの
と「原子力の研究、開発及び利用に関する長
期計画(平成6年6月)に明記されております。また、本年5月に取りまとめ
られた原子力委員会高レベル放射性廃棄物処分懇談会の報告書において、情報公
開や透明性を確保するとともに、処分地の選定を行っていくうえで、関係自治体
や関係住民の意見の反映に努め、立地地域の理解と信頼を得ることが重要である
とされております。その趣旨に鑑み、
貴職をはじめとする地元が処分場を受け入
れる意思がないことを表明されている状況においては、
岐阜県内が高レベル放射
性廃棄物の処分地になることはないものであることを確約します。


 法律家が回答書を解釈すると・・・

 「岐阜県を処分場とするという選択肢は、慎重に残されているものと考えざるを得ない。」

(2000年6月24日 日弁連の公害対策環境保全委員会報告「東濃の地層科学研究と地層処分の可能性」4〜5頁より)

3 科技庁回答の内容・解釈

 科技庁回答は、2項に分かれている。
 第1項は、東濃地科学センターが行っている地層科学研究では、研究実施区域に放射性廃棄物が持ちこまれることはないことを約束している。これは、平成7年12月28日に、岐阜県知事、瑞浪市長、土岐市長、動燃理事長の四者で締結された「東濃地科学センターにおける地層科学研究にかかる協定書」(以下「四者協定」という。別紙資料2)の第1項と基本的には異ならない。
 これによれば、超深地層研究所のみならず、地層科学研究実施区域には放射性廃棄物は持ち込まれないことになるが、しかしこの条項は「地層科学研究」において放射性廃棄物を持ち込まないとしているものであって、処分場とは別の問題である。また、地層科学研究においても、廃棄物ではない放射性物質の持ち込みは禁じられているものではない。
 なお、超深地層研究所(仮称)については、高レベル放射性廃棄物の処分場にするものではないとする科学技術庁長官の文書もあるが(資料1、3)これも、超深地層研究所に限定しており、それ以外の場所については何ら言及されておらず、超深地層研究所以外の場所が処分場とされてもこの文書に反するものではない。

 第2項は、高レベル放射性廃棄物処分場選定において、「貴職(岐阜県知事を指す。)をはじめとする地元が処分場を受ける意思がないことを表明されている状況においては、岐阜県内が高レベル放射性廃棄物の処分地になることはないものであることを確約」している。
 これは、現在、岐阜県知事が処分場を受け入れる意思のないことを表明しているから、その状況においては岐阜県内を処分場にすることはないというものであって、将来にわたって岐阜県内を絶対的に処分場としないことを確約したものではない。
 もし、将来岐阜県知事が受け入れる意思のないことを表明しない状態になれば、岐阜県内を処分場としても何らこの条項に反するものではない。特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律においても、概要調査地区等の選定に当たってはその所在地を管轄する知事及び市町村長の意見を聴きそれを尊重する旨の規定があるが、知事等の同意が要件とされていないことに留意すべきである。
 従って、この科技庁回答をもって東濃地域が処分場とならないと言うことはできず、かつ、地元の知事等の意見が尊重されることは全国どこも変わりがないのであるから、この科技庁回答は岐阜県を他の地域よりも優遇したものでもない。岐阜県を処分場とするという選択肢は、慎重に残されているものと考えざるを得ない。

 また、岐阜県と同じように研究所建設の計画が持ち上がっている北海道の幌延町では、連合北海道などが科学技術庁に提出した公開質問状の回答から、研究所建設計画のある自治体を処分場候補地から除外すると約束することは、国にはできないということが明らかになりました。岐阜県だけが、選定の調査地区から条件なしに除外されることはあり得ないのです。

以下は2000年4月27付「毎日新聞」

  放射性廃棄物処分問題

  科技庁 幌延除外を“撤回”

 高レベル放射性廃棄物の処分研究のため、核燃料サイクル開発機構が留萌管内幌延町で深地層研究所を計画している問題で、26日、連合北海道などが科学技術庁に出していた質問状への回答があった。幌延町を放射性廃棄物の処分場の除外地域とすることについて、科技庁の回答はあいまいなままで、処分場への可能性に含みを残す形となった。

 回答では、「地元が受け入れない意思を表明されているもとでは、処分場になることはない」とし、条件付きで処分場を建設しないとの従来の姿勢を繰り返した。

 しかし、処分場の除外地域となるかについては、処分場の選定プロセスを示した「都道府県知事、市町村長の意見を聴かなければならないと明確に規定されている」とし、「このプロセスを踏んで国としての判断を行う」とするにとどまった。

 科技庁は事前の調整段階で「幌延町に処分場を提案することはない」との回答案を示していた。しかし、この回答を撤回する形となり、今後、道民の間に処分場への不安の声が高まる可能性もある。

 連合の浅田明広・政策調査部長は「処分場にしないという国の考え方が明らかになっておらず、灰色の回答だ。今後、不安を払しょくするために道や幌延町の何らかの措置が必要となるのではないか」と話している。

 質問状は連合や民主党北海道などが2月に提出していた。【板垣 博之】


 ▼もどる