株主からの事前質問項目
(注)複数の株主からの質問をテーマ毎に並べているので、語尾が統一されてい ません。)
第90期 中部電力株主総会 事前質問書
2014年6月16日&18日
■発電コスト・発電実績・発電設備等(11 問)
1)当社の2013年度の主要電源別の発電コストを聞きたい。なお、水力は一般水力と揚水に分けて示してほしい。
2)火力発電所について、LNG、石炭、石油、その他の燃料別の発電コストを明らかにされたい。
3)当社の2013年度の二酸化炭素総排出量、および、その1990年度比の増減はどれだけであったか。
4) 当社の2013年度の二酸化炭素排出実績を、二酸化炭素排出削減に関するこれまでの当社の言明との関連でどのように評価しているか。
5)碧南火力発電所(日本最大のCO₂排出事業所)が次第に老朽化しているが、リプレースの検討はなされているのか。石炭火力は、温暖化コストを考えれ ば、今後は極めて高コストの電源になることはまちがいない。碧南火力発電所の石炭火力は順次廃止し、LNGコンバインドサイクル発電に置き換えていくべき だと考えるが、どうか。
6)原発の発電コストは、内部コスト(電力会社が負担するコスト)だけでなく、外部コスト(電力会社が負担していないコスト。その最大のものが、過酷事故 のコスト)も加えると、火力発電よりはるかに高く、風力発電はいうまでもなく、現状の太陽光発電よりも高くなるのではないかと、言われている。企業の社会 的責任の完遂を標榜している当社として、原発の外部コストに無関心でいることは許されないはずだ。そのことを踏まえて、
(1) 当社は、原発の外部コストはどれほどの大きさになると認識しているか。
(2) 当社は、外部コストを含めても原発は低コストの電源であると考えているのか。
(3) コストの大きな部分が外部化されている原発は、自由な市場経済になじまないという意見がある。この意見をどう評価するか。
7)現在建設中の浜岡原発の防波壁のみの工事費総額はいくらか。耐震工事・津波対策全体ではなく、防波壁のみの工事費用を明らかにされたい。
8)耐震、対津波対策で新たに行った設備投資による固定資産増は、何年で償却されるのか。
9)原発には、他の発電所では必要としない核物質防護のためのセキュリティ対策が必要である。管理システムや要員・警備の強化等、これらにかかる費用は浜 岡原発では年間幾らになるのか。
■事業報告・経営方針等(4問)
1) 事業報告では、「原子力、火力、再生可能エネルギーなどの多様なエネルギーをバランスよく組み合わせていく必要があります」と記されており、原子力と火力 については引き続いてさまざまな言及がなされているが、再生可能エネルギーについてはまったく言及がない。再生可能エネルギーを軽視しているのではない か。
このことに関連して、しかるべき将来における当社の再生可能エネルギーの調達目標(自社発電+購入)を示してほしい。
なお、電源として水力が挙げられていないが(従来は挙げられていた)、それはなぜか。
2) 総会資料のどこにも節電への取り組みが述べられていないようだが、21世紀の電気事業者の姿勢として欠けるところがあるのではないか。
3)福島原発事故以前の毎年度の事業報告では、原発は「安定供給や地球環境保全の面で優れた電源」と位置づけられている。
それが事故後においては、「安定供給の面で優れた電源」という記述はなくなり、「将来にわたり安定的にエネルギーを確保していくためには」重要な電源とい う、あいまいな位置づけに変わっている。そこで質問するが、当社は、いまでも原発を安定供給の面で優れた電源と位置づけているのか。もしそう位置づけてい るのなら、福島原発事故という一つの事故で、以後3年経っても国内のすべての原発が停止したままという現実と、この位置づけとが整合的であることを説明し てほしい。
また、「地球環境保全の面で優れた電源」という位置づけについては、事故後には、「地球温暖化という課題に対処」する上で重要な電源という位置づけに変 わっている。この変化は、福島原発事故を経験して、膨大な放射性物質を発生させる原発は、(地球温暖化に対処するには有効かもしれないが……質問者はそう は考えないが)全体として見た場合、地球環境保全という面で優れた電源ではないことに気づいたからであると理解してよいか。
4)5月21日の福井地裁における大飯原発の運転差止裁判の判決は、「極めて多数の人の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題とを並べた 議論の当否を判断すること自体、法的に許されないと考える」との判断を示している。 当社はこれをどのように受け止めたか。当社としては、人の生存そのも のに関わる権利と電気代の高い低いの問題は同等に論じられるべきとの立場か。
■浜岡原発事故の過失責任・事故時対策(5 問)
1)当社は浜岡原発の再稼働を目指しているが、原発を運転すればサイト外への大量の放射性物質放散を伴う過酷事故が発生する危険性は排除できない。そうで ある以上、会社にはそれに備えておく義務がある。その備えの一つとして決死隊の準備がある。過酷事故では、死ぬ覚悟で事故の拡大抑止のために作業すること が必要になることがありうる。そういう命令をする覚悟、そういう命令に従う覚悟がなければ、原発を運転すべきではない。 以上のことを前提にして、
1 当社にはいざという場合に決死隊を使う覚悟はあるのか。
2 いざという場合に決死隊を使うには事前の(過酷事故発生以前からの)十分な準備が必要だが、当社ではそれはどのようになされているのか。
2)福島で現実のものとなった史上初の原発震災に関して、東京電力に予見可能性があったか否かという点で、東京地検は刑事責任について不起訴相当とした。 東京電力が予見できなかった、と主張したためである。現在検察審査会で審査中で、今後起訴相当とされる可能性は高く、一方では関係役員に5兆5千億円の賠 償を請求する株主代表訴訟も起こされている。
浜岡原発では、福島原発とは異なり、政府により数十年も前からM8級の大地震が予見され、地震学者を始め社会からの警告も多々発せられてきた。私たちも株 主として総会等で度々指摘している。3年前には、首相の要請を受け入れて4・5号機を計画外停止し、今後に対する対策も少なからず行っている。これは予見 可能性を認めるものに他ならない。
それにもかかわらず地震・津波が来て、万一過酷事故をひき起こすに至った場合には、その誘因となった自然災害の規模によらず中部電力の過失は免れないと思 うがいかが。
3)福島4号機プールが空焚きにならないですんだのは、ほんの偶然の重なりであった。
(朝日6月9日吉田調書)
浜岡原発でも地震・津波に伴う何らかの事情で使用済み核燃料プールが空焚きにならないよう、プール側水圧が減少した際に原子炉ピットから冷却水が流入する ように対策しておくことが必要と思うが、対策は如何。
4)同様に、ブローアウトパネルを、必要に応じて開閉できるようにしておくことが、中越沖地震及び今回の事故からの教訓として求められていると思うが、そ の対策は如何。
■ プルサーマルについて(3問)
1)静岡県の川勝知事は、4月の共同通信のインタビューで“使用済み核燃料 を再処理して取り出したプルトニウムをウランとの混合酸化物(MOX)燃料にして原発で使うプルサーマル計画は「白紙だ」と明言し、過去に県が同意した浜 岡4号機での実施計画は容認できないと表明した。」 と報じられています。当社としては、地元自治体の意に反してもプルサーマル計画を継続するつもりですか。
2)嫌がる地元を今後説得できる保証はありません。計画のごり押しは地元との関係を壊します。プルサーマル以外のプルトニウムの処理方法を真剣に模索すべ きではないですか。
3)川勝知事は、「青森県六ケ所村での再処理事業が今後も進まず、使用済み燃料が全国の原発に返還される事態になれば、 引き取って乾式貯蔵するのが「(立地県としての)義務だ」と強調」したと書かれています。これほど理解のある知事は他にはいません。乾式貯蔵施設に使用済 みMOX燃料を加えるようなことは、道義的にも避けるべきではありませんか。
■ 使用済み核燃料乾式貯蔵施設について(2 問)
1)現在、新規制基準に基づき設計を行っている段階ということですが、いつまでに着工し、完成時期はいつになるのですか。
2)完成時期を前倒しすることはできないのですか。できないとすれば、何故ですか。
■浜岡原発敷地周辺の地下水について(7問)
1)浜岡原発敷地周辺の現在の地下水位は、T.P.何メートルから何メートルですか。サブドレインによる汲み上げがあった場合とない場合について回答して ください。
2)常時地下水の汲み上げを行っているサブドレインは、敷地内に何本設置されていますか。また、だいたいの位置を教えてください。
3)前項のサブドレイン全体で1日(24時間)に汲み上げている地下水の量は何トンですか。
4)汲み上げた地下水の処理方法はどのようにしていますか。
5)津波が襲来した場合、地下水位が上がり敷地内が余震時などで広い範囲で液状化する危険性があります。
敷地内構造物の浮き上がりなどに対する対策は万全ですか。例えば岩盤に固定していない道路のアスファルトの対策はどのようになっているのですか。
6)駿河湾地震で発生した敷地内の15cm〜20cmの隆起・沈降の原因は何だったのですか。
7)岩盤の位置が深く、防波壁が設置できない新野川・筬川に面する盛土部分は、底部液状化による斜面崩壊の可能性があります。対策はどのように考えていま すか。
■ 日本原電、北陸電力との契約について(2 問)
1)日本原子力発電の敦賀原発、北陸電力の志賀原発の維持費として昨年度支払った額を明らかにされたい。
2)北陸電力との受電契約について、志賀原発停止で供給してもらえなくなった電力を他の電源で代替して、購入代金を支払わずに供給を受けることは可能なの か。
■政治家のパーティー券購入費について(4 問)
1)今年1月朝日新聞の報道で明らかになった政治家のパーティー券購入について、1回あたりの購入額をわざわざ20万円以下にしていたのは、どのような理 由からですか。
2)当社は会社として政治献金はしないとしていますが、パーティー券購入という形で長年政治家に資金供与してきたことになります。そのことを隠していた理 由は何ですか。
3)今後も一部の政治家に会社として資金集めに協力する予定ですか
4)これまでの購入額の総額を明らかにしてください。明らかにできない場合は、その理由をきちんと説明してください。
■ 芦浜地点について(5問)
今年4月に消費者庁が発表した「中部電力株式会社の家庭用電気料金値上げ認可申請に関する意見」では「計画が撤回された芦浜原子力発電所予定地など、売却 可能資産の現状、処分計画等を明らかにするとともに、引き続き保有するものについては、その理由や、今後の取扱等についての説明責任を果たすべきである」 とされました。
1)売却可能資産はいくらと見積もっていますか
2)年間管理費等、保有することによる費用はいくらですか
3)処分計画等を明らかにしてください
4)当社はこれまで「一団の土地である」との理由で使いみちを明示してこなかったが、これでは理由になりません。その理由を示すことで説明責任を果たして 下さい。
5)今後の取扱等についても説明責任を果たして下さい。
■浜岡原発の廃炉(6問)
○ 以前の株主総会で、事前質問に対する回答として、1、2号炉の廃止措置に要する費用は、1号炉が総額379億円、2号炉が総額約462億円と見積もっ ているとありました。
1)見積もり額について、浜岡3号炉の約775億円、4号炉の729億円、5号炉の852億円に比べると、電気出力の比率から言っても少ないように思われ ます。1、2号炉の見積り額は現在でも変わりはないですか。(見積り額は今も妥当と考えていますか。)
見積り額に変更があれば、その額はいくらですか。
2)昨年10月、原子力発電施設解体引当金に関する会計規則の変更がありましたが、1、2号炉の廃止措置に充てる費用については、何か変更点はあるので しょうか。あるとすれば何ですか。
3)浜岡1、2号炉のための原子力発電設備解体引当金は累積でそれぞれいくらまで積み立てられていたのですか。財務諸表のどの費目に含まれていますか。
4)2014年3月31日現在の引当金残高は1、2号炉でそれぞれいくらですか。細目に分けてお答えください。
5)1、2号炉の廃止措置に関してこれまでに費消された金額はいくらですか。細目に分けてお答えください。
6)廃炉に際して新しい技術開発が行われると思いますが、そのような費用は廃炉費用に含まれていますか。含まれていなければどの費目に含まれますか。これ までに費消した額はいくらですか
■新規制基準(7問)
○新規制基準に浜岡4号炉が審査申請を行ったことに関連して、
1)浜岡原発前面1.6kmの防波壁に関して、設計上もっとも力がかかり強度の上で最も小さいのはどの部分ですか。
2)また構造上の安全確認のための実証実験は行われていますか。それは引きと押しを繰り返す津波の現実の特徴を反映したものとなっていますか。
3)防波壁の設計耐圧はいくらですか。
4)設計の前提として、最大津波時に同壁にかかる最大圧力をいくらと評価していますか。
その際、2011年2月11日の東北地方太平洋沖地震後の津波で破壊された多くの防潮堤にかかった圧力についての評価が行われ、参考にされたと思います が、最大圧力について、どのケースでいくらであると評価しましたか。
5)建屋入口の扉の水密化によって耐圧はいくらになりましたか。防波壁の設計耐圧とは異なると思いますが、その違いを安全確保の面でどう考えていますか。
6)新野川の年間平均流量はいくらですか。
7)新野川はあらかじめ確保されていたプールの水を使い切った後の役割分担として期待されていると思いますがか、その内容はどのようなものですか。
■ 減損ウラン(2問)
1)設置変更許可申請書添付書類四では、当社が使用するウラン燃料はカメコ社による長期契約及び再処理より回収された減損ウランによって2.97×10 7kgU3O8確保されているとあるが、ウランと減損ウランの比率はいくらか。
2)これまでの浜岡原発での減損ウランの使用実績は何kgか。
■ 情報公開(5問)
1)当社には、情報を開示すべきか否かを判断するための基準で明文化されたもの(ガイドラインのようなもの)はあるのか。
2)基準が存在する場合、それは何年ごろに文章化されたものか。
3)基準が存在する場合、商業秘密、核物質防護、プライバシーに関わるものなどの項目別に分けられていると考える。それ以外の理由で情報が開示されないと いうことはあるのか。あるとすれば、何が理由となるのか。
4)情報を開示するか否かの判断は、最終的には誰が行うのか。
5)福島原発事故の際、災害支援のために駆けつけた消防隊員が敷地内の建屋の位置などを把握するため地図を要求したところ、テロ対策のために公開できない と拒否されたという。当社でも、敷地内の建屋の位置などが入った地図は公開できないものとして扱われているのか。
6)当社の従業員で「特定秘密保護法」に係る「特定秘密」を扱う可能性のある人(適正評価をされる)はいるのか。それとも当社の業務は、「特定秘密」に関 係するものは全く存在しないという認識なのか。
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