<非凝縮性ガスの蓄積箇所について>
(「最終報告」の矛盾に関するやや細かい考察)


◆水平配管


 上り勾配でもなく、下り勾配でもない水平配管における非凝縮性ガスの蓄積については考えてみたい。

 まず、今回破断した当該配管で、最初に非凝縮性ガスの蓄積が始まった場所が、「最終報告」(甲)P266〜267で説明されているような垂直に立ち上がった配管ではなく、水平部分であったことを指摘する。

 「最終報告」(甲)P.24では、当該配管のことを「配管頂部が閉塞された蒸気配管において」としている。頂部というのはふつうに考えれば1MV-1308Bの弁の直近の行き止まり部ではなく、この場合、水が滞留しはじめた場所の上流の一段高くなった部分を指す。ここは運転開始時に既に滞留水が満水になっていれば頂部の最下流が閉塞されていることになるが、満水になっていない場合の閉塞部は頂部にはならない。

 実は、報告書では、第19サイクルを開始した時に、弁から約90cmの水平部分に水がどれだけ溜まっていたのかは書いていないが、第18回定検では当該弁は開放していないので、おそらく、当該弁から上流約90cm部分は最初から満水に近い状態であったと思われる。
 しかしながら、第18サイクルの開始時については、その直前の第17回定検で当該弁は開放したので、水は溜まっていなかったはずである。しかし、運転中に水は蓄積していった。つまり、弁から約上流90cm部分でも非凝縮性ガスの蓄積は起こっていたと考えられる。

余熱除去系蒸気凝縮系系配管

1MV-1308B弁→

 「最終報告」(甲)P.264の計装配管における類似箇所の抽出フローにおいては、「上り勾配で行き止まりとなっている配管、配管ルートの途中で頂部がある箇所・・・」という表現があるので、「弁の直近」「行き止まり部」を「頂部」と同じ意味で使っているとは考えにくい。当該配管における「行き止まり」は、第19サイクルと第18サイクルでは場所がちがっており、第18サイクルにおいては、「頂部」と「行き止まり」は一致していないのである。

 一方、P.24「当該配管における非凝縮性ガス蓄積状況の推定」では、「当該配管の“行き止まり部”において非凝縮性ガスの濃度の上昇とともに温度の低下が生じた」とあり、「頂部から」とは表現していない。報告書では、この2つの言葉を曖昧に使っているようにも見える。(言葉の意味を曖昧に使っている例は、「流入」と「ゆらぎ」についても言える。)

 ここでは、非凝縮性ガスは、拡散速度より早い蒸気の流れに取り込まれて運ばれるとある。しかし一方で、配管行き止まり部からではなく、「配管頂部」に蓄積すると書かれている。もし、P.266にあるような頂部が行き止まりである配管ならばこの説明は正しいが、実機のように頂部と行き止まり箇所が異なる場合は、これは明らかな矛盾となる。それは、P.264の計装配管における類似箇所の抽出フローの説明にある、「ルートの途中で頂部がある箇所」の場合も矛盾する。また、下り勾配配管についてのP.267の説明にも矛盾するものである。

 従って、頂部が閉塞された配管として報告書が念頭においているのは、P.266にあるような鉛直に立ち上がった配管であろう。そうであるなら、非凝縮性ガスの濃度上昇過程として挙げられている説明もつじつまがあう。そうであるなら、この水素蓄積のメカニズムの説明は、明らかに実機を説明したものではないわけである。

◆温度境界層と非凝縮性ガス蓄積との関係

 「最終報告」(甲)には、「実配管を模擬した試験装置によるガス蓄積試験の結果、以下のことを確認した。」とあり、
・ 「鉛直配管部では、非常に狭い幅で急激な温度勾配が生じる境界層が形成されるが、水平配管部では、温度変化は緩やかであり境界層は形成されない。
・ 境界層では、急激に非凝縮性ガス濃度が高くなる。また、境界層から配管頂部に行くに従い、徐々に非凝縮性ガス濃度が高くなっていく。(後略)」
いう説明がされている。(23ページ)

 しかしながら、この境界層が水素の蓄積や着火にどのように関係しているのか、最終報告では明確な説明がなされていない。
 また、原子力安全保安院の最終報告書48ページには、「c.配管下部が閉塞している鉛直配管及び水平配管における蓄積」の項で「水平配管においては、密度差による層の形成が起こらず、明瞭な温度境界層が形成されることはないと推定される。」という記述がある。見だしを見るかぎり、非凝縮性ガス濃度の上昇がないと結論されても不思議ではないが、この温度境界層がないから蓄積しないともするとも何も書いていない。中電の報告書も保安院の報告書も何のために、この温度境界層(温度成層)という概念を何ページにもわたって説明しているのかがはっきりしないのである。

 そこで、改めて中部電力広報に確認をした。何ヶ月も待たされて出た回答は、「配管水平部では非凝縮性ガスと水蒸気の間に温度成層が形成されないため、非凝縮性ガスの蓄積は起こらない」というものだった、

 実機では水平配管で非凝縮性ガスの濃度上昇が始まった事実を見れば、はっきりした境界層がなくても非凝縮性ガスが蓄積することは明らかである。上り勾配の配管においてのみ、非凝縮性ガスが蓄積するという結論を導くためにこの鉛直配管における温度成層という概念を用いているのであろうか。もしそうであれば、事実がその論理を否定していることになる。

◆ 水素は軽いから頂部に溜まるのか

 当該配管のこの部分に非凝縮性ガスが蓄積したのが、水素の重さに関係していたのかどうかは明らかにされていないが、当初、水素は軽いから上の方に溜まるということで「上り勾配の配管」を選定した可能性がある。

 しかし、それもまた事実によって否定される。
 1号機と2号機の類似配管で測定された気体の組成について測定したところ、以下のような結果になった。(「最終報告」(甲)P.99より)

 これについて、「1号機RHR(A)の水素濃度が低い理由は、破断した(B)系配管と(A)系配管がつながっており、破断後約1ヶ月経過後にサンプルの採取をしたことから、大気中の空気に置換されたもの」

「2号機RHR(B)の分析結果について、(A)系窒素パージの際、(B)系に窒素が混入した影響および(A)系のサンプリング・窒素パージ後、4日間大気開放されていたことから大気が混入した影響」(最終報告 100頁)と説明されている。しかし、配管の長さは、いずれも母管からの分岐部より50m、大気が入り込む破断箇所や2号機(A)系の開放口からは100m離れており、非凝縮性ガス或いは空気はが地上2階から地下2階の分岐部までいったん下がらなければ大気と置き換われない。

 従って、水素が軽いために頂部から蓄積が始まるということであれば、大気開放により水素が逃げていった理由が説明できない。そのことは、原子力安全委員会の「ワーキンググループ構成員から提出された原因究明に係る意見」の中でも指摘されていることである。
 調査項目「水素の発生および蓄積のメカニズムについて」の着目点に「1号機A系では2号機に比べ水素が少量しか検出されず、酸素と窒素の比率が空気での比率に類似。A系でも水素燃焼があって水素が消費されたことも考えられる。」とあり、A系で水素燃焼でも無い限り、1号炉A系の気体の組成が変わることは説明できないからである。

 1ヶ間の開放で、なぜ置き換わったのかという問題について考える時に、最終報告では次のような記述もある。187ページ図-1「非凝縮性ガス蓄積量の推定結果」の第18回定検において、主蒸気の母管は開放し、RHR配管はA、Bとも開放しない場合、「第18サイクル末非凝縮性ガス残留、但し大気圧による体積膨張(約70倍)により当該配管よりはみ出した分は流出する。」とあり、第19サイクルでは、「第18回定検時の残留ガス(約1/70に圧縮)+非凝縮性ガス蓄積」となっている。

 つまり、約40日の定検期間中、何日目に弁を開放したかにもよるが、一定期間開放した後でも、非凝縮性ガスは配管内に残留するとされているのである。しかも、188ページの「定検時のRHR蒸気配管の空気置換」という項目では「定検時のRHR蒸気元弁の分解点検状況に応じてRHR蒸気配管全体の空気置換の有無を想定しているが、分解点検しない場合でもHPCI分岐部につながるRHR蒸気配管の水平部など一部が空気置換されたことも考えられる。」としていて、誤差要因としても、全体が空気置換されることは全く想定されていないうえ、開放する日数が置き換わる気体の量に影響するかどうかということも全く言及されていない。
 したがって、この論理でいくと、4日間であろうが、1ヶ月であろうが大気開放によって残留した非凝縮性ガスに空気が混入したり、空気置換するという説明はできないことになる。大気開放したためにこのような測定結果になったとする最終報告の説明は明らかにおかしい。

 結局のところ、非凝縮性ガスのふるまいについてほとんど把握できないまま、恣意的にその性質を変えて最終報告を書いていると言わざるをえない。

 そうである以上、水平配管については、安易に対策から除外することはできないはずである。

「最終報告」(甲)P.100

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